仕事

仕事

1.新入職員(録)

ここに入社出来たのは、運が良かったと言えるだろう。 高校の成績からは、分不相応な会社へ潜り込めたと思っている。 地元採用という形での入社だが、まだ、この時は働くべき場所が無い。将来的に支社が出来るのを見越しての採用だった。 取り敢えずの丁稚...
仕事

2-①.一般職員(録)

緊迫の試用期間が終わった。 教育内容は殆ど記憶に無いが、その『真面目な勤務姿勢』から、正社員として迎えて頂く事になった。しかし、正式採用後の『適当な勤務態度』には、会社側も『失望』したのではないだろうか。 当時の自分は、先輩方に言わせると『...
仕事

2-②.一般職員(録)

生まれて初めて、花束を貰う。特に嬉しいものでは無い。 4年間の修業期間を満了し、転勤となる自分への送別会が開かれていた。着慣れぬスーツにネクタイで、先輩・上司から激励の言葉を掛けられる。公私共に散々、ご迷惑をお掛けした身として、最後に何を言...
仕事

2-③.一般職員(録)

新たな職場は、今迄とは違い、一種異様な緊張感があった。 オフィスは静まり返り、雑談の欠片も無く、各々がパソコンに向って、何かに追われるが如く集中している。邪魔をしない様に足音を殺し、『課長』の前に歩を進めた。 『失礼します。本日から、宜しく...
仕事

2-④.一般職員(録)

只、ひたすらに、目先の事を追うので精一杯だった。 山積する業務の対応が追い付かぬまま『新規事業』の主査をする状況になってしまった。誰も経験が無い未知の領域だ。ましてや、新参者が受け持つのだ。自分のみならず、部署全体で大きな不安感が漂っていた...
仕事

2-⑤.一般職員(録)

『お願いがあります』 後輩から突然の申し入れだ。 当社には、零細ながら『組合』がある。その頃、自分はこの組織にまるで興味が無く、会費だけ収めて、行事には強いて参加しない『幽霊』組合員だった。当組に『専従』は無いため、殆どの活動は『ボランティ...
仕事

2-⑥.一般職員(録)

『主任』になる。遅くもなければ、早くもない。 特に何が評価された訳でも無く『年功』で昇進した。役職は付いたが、現状と何一つ変わるものは無い。とは言え、モチベーションは上がる。サラリーマンの悲しいサガだ。それから数日後、取り敢えずの通過儀礼で...
仕事

2-⑦.一般職員(録)

御方が退職して、1年が経過していた。 新しい課長の下、体制や業務手順は改定され、職場の雰囲気も変わり、以前とは全くの別世界になっていた。だが、その頃、一番の変貌を遂げたのは『自分』だったかもしれない。 今迄は御方の機嫌を伺い、あの人が『納得...
仕事

2-⑧.一般職員(録)

その一画は、やたらと格式高い雰囲気に包まれていた。 本日より『本社』勤務となる。この地方では、最も『都会』に位置する場所であり、親会社とグループ企業のビルが同じ区画内で隣接しているため、かなり大規模な会社の集合体となっていた。取り敢えず近寄...
仕事

2-⑨.一般職員(録)

やはり現場と比べ、本社は華やかな職場と言えるだろう。 何せ『女性社員』が過半数を占めている。高校時代から女っ気の少ない人生において、この状況は『未知数』以外の何物でも無い。異動前、元本社の女性社員に心得を問うた所『髪・髭・爪・襟・靴』の清潔...