1-⑦.離別編

生活

自らの行く末は、まだ前途多難と言う他無い。

『離別』が決まった以上、これから、その前準備を済まして置く必要がある。先達て、妻方の両親へ『挨拶』と『報告』をすべきと考えた。如何に本人同士の事とは言え『無言』で去るには、余りにも『お世話』になり過ぎている。勿論、会わせる顔は無い。だが、これは最低限の『禊』と覚悟を決め、電話でお伺いする日時を伝えて、当日を迎えた。

 

『お邪魔します。ご無沙汰しております』

『うん。そうね。お久しぶり』 親父さんは、腕を組み無言だ。

『本日、伺ったのは、お聞き及びかと思いますが、』

『・・ええ』

『離婚する事になりました』 この状況、結婚報告の時には夢にも思わない。

『色々、聞いては居るのよ。もう、どうにもならないみたいね』

『はい。自分の力不足です。大変申し訳ありません』

『まあ、今回はどっちが悪いもないわ。此方、添い遂げてあげられなくてゴメンね』

『いえ、そんな・・』

『けど、これで終わりにしないで欲しい。今後もお付き合いは続けてね』

『・・はい、ありがとうございます』

 

罵られると思っていた。望外の言葉を頂き恐縮の極みだったが、更に図々しくも、この日、重ねて『恥の上塗り』をする必要があった。

 

『あの、見当違いを承知の上で、お願いがあるのですが』

『え? なに?』

『すみませんが、離婚届の『保証人』になっては頂けないでしょうか』

自分は親と『絶縁』状態にある。情けなくも、他に頼る所が無かった。一応、妻からこの状況は伝えて貰っている。意を決して、最後の『甘え』だった。

 

『そうね、わかった。いいわね、あなた』

『ああ。名前くらい、幾らでも書くさ』

『申し訳ありません。ありがとうございます』

 

終いの時まで『ご迷惑』をお掛けしつつ、これで一通りの『準備』は整う。だが、もう一つすべき事がある。二人の娘に『離婚』を伝えなければならない。妻は『まだ小さいから言っても解らない』と否定的だったが、自分はそう思わない。5才と12才なら、状況は十分感じている筈だ。自分が説明する事を条件に妻も渋々承諾し、その夜、4人でテーブルに着く。緊張の面持ちで俯く二人の手を取り、目線を合わせて、只、素直な気持ちを伝えた。

 

『父さんと母さんは、お別れする事になったんだ』

『・・・』

『けどね、父さんと二人は、お別れじゃないよ』

『・・そうなん?』

『うん。二人は、帰るお家が2つになるんだ』

『2つ?』

『そう。何時、どっちに帰っても良いんだよ』

『・・・』

 

極力、笑顔で話した。悲しむ必要が無い事を伝えたかった。二人も、ほんの少しだけ『安心』している様に見えた。

 

『お話は終わり。テレビでも見よう!』

『うん!』

ソファーに座り長女の肩を抱き、次女を膝に乗せてリラックスタイムだ。しかし、二人の『温もり』を感じ、うっかり余計な事を考えてしまう。

 

その時、次女の頬っぺたに何か落ちた。

上を見上げる次女。

『とーさん、たくさんないてる』

『ないて、いいんだ』

 

うあぁあ゛んあぁんあ゛ぁうあ゛ぁんあぁあ゛ぁん

 

三人で号泣した。泣いて良かった。やっぱり悲しい、寂しい、辛い。その日は皆で布団を並べて就寝した。自分は一人眠らず、何時までも名残を惜しむ様に、二人の寝顔を眺め続けていた。

以上