兼ねてから『文章を書きたい』と願う強い欲求があった。
好きと言う感覚では無く、只、鬱積したものを爆発させたいモヤモヤした気持ちが、何時も心の片隅にあった。
では、それをどう表現するのか。まず思い付くのは『小説』だが、一つの題材で数万字のボリュームを出すなど想像も付かないし、そもそも『原作』が無い。また『論文』への挑戦を試みるも、工業高校卒の自分は作文しか書いた事が無く、応募内容も題目からして意味不明だった。成らばと『日記』を付けてみたが、1日で飽きる。やはり、人に見て貰う事が前提の作りで無いとモチベーションが持たない。八方塞がりでネットを眺めていると『歳を取ってからも出来る趣味』で『ブログ』のワードを見つける。
『ブログ』・・って、何だっけ?
直感的に興味が湧き、詳細を調べてみる。形態は様々だが、結論として『書きたい事を好き勝手書いて良い世界』の様だ。これだ!一気にテンションは上がり、念願の実現に向け、ようやくスタートラインに辿り着いた。しかし、実際に『書き始める』までの道程は、決して楽なものではなかった。
最初の難関は『ホームページ』作りだ。方法は大きく分けて二つあり『多数あるサービスサイトに会員登録』若しくは『自ら開設して一から立ち上げ』となる。はっきり言って、自分は相当の『物ぐさ』だ。全てにおいて『楽』であるに越した事はない。更に超初心者と来れば、最大手のサイトへ登録して『簡単』に始める事へ最初は一点の迷いも無かった。だが、規約等を調べるにつれ、段々と気が変わってしまう。曰く、サイトにはそれぞれ規制があり、その自由度には限界があるらしい。しかも、作品の『生殺与奪と著作権』はサイトが所有し、心血注いで書いた文章が、極論『自分の物』では無いと言う現実を事知り、止む無く登録を踏み留まるに至った。
結局、最終判断は『自己開設』となったのだが、これ又、一筋縄では無かった。当然、自分はプログラミングの知識など持ち合わせていない。しかし、調べてみれば、それは決して必要なスキルでは無い様だ。ネット検索で何とか各種情報を搔き集め、一週間程掛けてリサーチした結果は下記の通りだった。
1.レンタルサーバに登録し『Word Press』でホームページ開設
・自分が選択したのは『ConoHa WING』だ。サービス内容にもよるが、ランニングコストは、1万円/年程度で通信速度も速いとの触れ込み。他を知らないので比較は出来ないが、使用して特段ストレスを感じた事は無い。登録方法もサイトにある手順通り進めれば、パソコン音痴の自分でも、40分位で全工程を無事完了出来た。
2.ホームページ作成
・拘れば際限が無く、果ては特化したスキルを必要とするが、無料のテーマを使って簡単に作成する事も可能だ。そして『プラグイン』という、各種機能向上プログラムを自己判断でインストールすれば、一通りの体を成す事は出来る。
3.ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)登録
・ブログをするなら、やはり『広告』を張ってみたい。もし、自分のホームページで収入が発生すれば、これ以上の喜びは無い。現在は『A8.net』に登録しているが、趣味の範囲であれば、これ一本で十分な程、広告数が多い。
以上、その気になってやれば、決して不可能では無い。しかし、自分には一つだけ拭い切れない大きな『心配』があった。それは、自己開設には『アンサーライン』が存在しない事だ。如何なるトラブルがあろうとも、全て自分で解決する他無い。電化製品ですら苦手分野の身では、かなりハードルが高く感じてしまう。また、ホームページには『理想』の完成型があったが、それを実現出来る自信も全くの皆無だった。『やはり無理なのか』そう諦め掛けた時、ふと思いつく、
『自分で出来なければ、任せればいい』
仕事で培われた感覚が助けになった。それからは『外注先』を求め、調査を開始する。探してみれば、近隣でも『Word Press』でホームページを作成してくれる会社は結構あった。おっしゃ!いける。俄然、構想は現実味を帯び始め、興奮の中、業者選びを始めた。取り敢えず、検索の最上位にある会社に電話をしてみるが、これが結果的に『大当たり』だった。
『こんにちわ』
『はい、お電話ありがとうございます。どういったご用件でしょう』
『はい、ホームページの作成を依頼したいのですが』
『なるほど、どの様な業種ですか?』
『あ、いえ、個人のブログなんですが』
『え?!』
『う、、出来ませんか?』
『あ、いや、そういった依頼は初めてなもので・・』 やはり基本的には法人が相手の様だ。
『今度、詳しい内容を説明に伺ってもよろしいですか?』
『ええ、分かりました。お待ちしております』
そして当日を迎え、意気揚々と店に到着した。店構えは、ログハウス調でとても洒落ており、店主の清潔感ある短髪と小奇麗な服装にまずは一安心する。会社と言っても『フリーランス』でやっていて、個人経営の様だ。
『こんにちわ~、お世話になります~』
『ああ~、こんにちわ。お待ちしておりました』
『それでは、早速ですが・・』
そう言いつつ、エクセルで作成した『設計図』を取り出し、思いの丈をぶちまけた。30分で終わる筈の打ち合わせは、気付けば2時間を越えていた。
『・・と、いった感じなんですが、出来ますでしょうか』
『ええ、全く問題ないです。と言うか、既存の物だけで済むので、むしろ出番が無い位です』
『いえいえ、そんな。それで、この仕事は如何程でお受け頂けますか』
『う~ん、そうですねぇ・・』
初めての趣味で道具を揃えるのに、10万円掛かる事はザラだ。そこまでの出費は覚悟していたが、ほぼ『言い値』の状況に緊張の中、回答を待つ。
『とりあえず、5万円をベースで行きましょうか』
『え!? それでいいんですか』
『まあ、追加が出そうなら、都度相談させてください』
『分かりました。それと・・』
『はい?』
『今後、システムの操作指南やエラー・トラブル発生時における対応もお願い出来ますか?』
『大丈夫ですよ。内容次第で費用が発生する場合もありますが』
『ええ、それは当然です。では、よろしくお願いします』
『はい、承りました』
うおお!やった。無事『バックアップ体制』も確保し、懸念は完全に解消された。これで『ブロガー』になれるぞ。その後、約一ヵ月を掛けて、ホームページは無事完成をみる。『出番は無い』と謙遜していたが、自分の細々しい『要求』を丁寧に対応頂き、まさに理想とするフォーマットを実現できた。しかし、どう考えても『5万円』の工量では無い。
『あの、ホントに5万円でいいんですか?』
『はは、まあ、今回は私も初めての経験が多かったので、その勉強料で相殺という事で』
『そうですか、ありがとうございます』 メッチャええ人や。
その後、ホームページがオンラインに乗り、約一年が経過している。週一掲載を継続し、目標の『50記事・8万字以上』目前だ。現在、SEOには見向きもされず、誰の目に触れる事もないが、このまま終わったとしても全く問題は無い。サラリーマンの世界から『世の中の仕組み』を垣間見ただけでも、十分価値ある事だ。今や、この経験とホームページは、自分の人生において、愛着ある大事な『宝物』の一つとなっている。
以上